産休・育休中の社会保険料免除 | 14日ルールとボーナスの1ヶ月超ルール

育休給付金が「67%なのに手取り8割」になる最大の理由が、この社会保険料の免除です。地味な制度ですが、金額としては月4万円前後、ボーナス月には十数万円が変わります。

そして重要なのは、育休の取り方(日数と時期)によって免除される額が変わることです。特にボーナス月の扱いは、1日の差で十数万円が動きます。この記事では日本年金機構の一次情報をもとに、損しない取り方まで整理します。

何が免除されるのか

産前産後休業・育児休業の期間中は、次の保険料が免除されます。

しかも本人負担分だけでなく、会社負担分も免除されます。会社にとってもコスト減になるため、「育休を取られると会社が損をする」という思い込みは、少なくとも社会保険料に関しては当たりません。

「免除」であって「猶予」ではありません。あとからまとめて請求されることはなく、健康保険証もそのまま使えます。そして後述のとおり、年金の加入期間としてもきちんとカウントされます。払っていないのに払ったものとして扱われる、かなり手厚い制度です。

なお、雇用保険料は給与が支払われなければそもそも発生しません(給与額に料率を掛けて計算するため)。住民税は前年所得に対して課税されるので免除されず、育休中も支払いが続きます。ここは要注意で、育休1年目は前年のフル給与に対する住民税が請求されます。会社によっては一括徴収や自分で納付になるので、事前に確認してください。

産休・育休中の扱い
健康保険料免除
厚生年金保険料免除
雇用保険料給与が出なければ発生しない
所得税給付金は非課税のためかからない
住民税免除されない(前年所得に課税)

産休中の免除

産前産後休業(産前42日・産後56日)の期間も保険料は免除されます(日本年金機構:産前産後休業期間中の保険料免除)。

免除期間は産前産後休業を開始した日の属する月から、終了する日の翌日が属する月の前月までです。この期間は出産手当金を受け取っている時期と重なります。出産手当金は非課税、社会保険料は免除——だから額面の3分の2でも手取り感覚では8割前後になるわけです。

育休中の免除と「14日ルール」

育児休業中の免除期間の原則は次のとおりです(日本年金機構:育児休業等を取得したときの手続き)。

原則:育児休業等を開始した日の属する月から、育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの毎月の報酬にかかる保険料が免除される。

この書き方は分かりにくいのですが、実質的には「その月の末日に育休中であれば、その月は免除」という意味になります。

令和4年10月からの「14日ルール」

従来はこの原則だけだったため、月末をまたがない短い育休は一切免除されませんでした。たとえば「5月10日〜5月24日」の2週間の育休では、免除ゼロです。1〜2週間の育休を取るパパが不利になっていました。

これが令和4年10月に改正されました。

14日ルール:開始日の属する月と終了日の翌日が属する月が同一の場合でも、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上取得した場合は免除(令和4年10月1日以降に開始した育児休業等に限る)。

つまり同じ月内で完結する育休でも、14日以上取れば その月の保険料が免除されます。標準報酬月額30万円の人なら、健康保険料と厚生年金保険料の本人負担で月あたり約4万円。2週間の育休で4万円が浮く計算です。

出生後休業支援給付金も「夫婦それぞれ14日以上」が条件なので、短期育休を取るなら14日以上がひとつの基準になります。13日と14日で結果が大きく変わるため、日数設計は慎重に。

ボーナスは「連続1ヶ月超」が必要

ここが本記事で最も金額インパクトの大きい部分です。賞与にかかる保険料の免除には、月々の給与とは別の条件があります。

賞与の免除要件:令和4年10月1日以降に開始した育児休業等については、当該賞与月の末日を含んだ連続した1ヶ月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除

ポイントは2つあります。

この改正は、実は免除を厳しくする方向の見直しでした。改正前は「賞与月の末日に育休中であれば免除」だったため、ボーナス月の月末に1日だけ育休を取って数十万円の保険料を免除させるという使われ方が問題視されたためです。

金額で見るとどれくらい違うか

賞与80万円の人の社会保険料(本人負担分)は、健康保険料と厚生年金保険料を合わせておおむね12万円前後です。

育休の取り方(賞与月が12月の場合)賞与の保険料
12月20日〜12月31日(12日間)免除されない
12月1日〜12月31日(ちょうど1ヶ月)免除されない
12月20日〜翌1月25日(1ヶ月超・月末を含む)免除(約12万円)

同じ「育休を取る」でも、期間の設計次第で十数万円変わります。育休の時期を選べる立場なら、賞与月の末日をまたいで1ヶ月超という取り方を検討する価値があります。もちろん保育や仕事の都合が優先ですが、条件を知らずに13日で終えてしまうのはもったいない話です。

免除されても年金は減らない

「保険料を払っていない期間があると、将来の年金が減るのでは」と心配する人がいますが、減りません

免除期間は保険料を納めたものとして扱われ、加入期間にも年金額の計算にも算入されます。産休・育休を取ったせいで老後の年金が目減りする、ということは起こらない設計です。

復職後にやるべき2つの手続き

復職したあとにも、知らないと損をする制度が2つあります。どちらも自分から申し出ないと適用されません。

1. 育児休業等終了時報酬月額変更届

時短勤務などで復職後の給与が下がった場合、通常なら標準報酬月額の改定は年1回(定時決定)まで待つ必要があります。しかしこの届出を出せば、復職後3ヶ月の給与をもとに標準報酬月額を早期に見直せます。給与が下がっているのに高い保険料を払い続ける期間を短くできる、という手続きです。

2. 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(重要)

1の手続きで標準報酬月額を下げると保険料は安くなりますが、そのままだと将来の年金額も下がってしまいます。これを防ぐのがこの制度です(日本年金機構:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置)。

3歳未満の子を養育する期間中に標準報酬月額が下がっても、年金額の計算では「下がる前の高い標準報酬月額」で計算してくれる制度です。保険料は安いまま、年金額は据え置き。時短勤務で働く人にとって非常に有利な仕組みです。

対象期間は養育開始月から、子が3歳になる誕生日のある月の前月まで。「養育開始月の前月に厚生年金の被保険者であること(またはその月前1年以内に被保険者期間があること)」などの条件があります。

手続きは「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を事業主経由で提出します。そして重要なのが遡及のルールです。

さかのぼれるのは申出日の前月までの「2年間」だけです。3歳まで対象なのに遡及は2年——気づくのが遅れると、その分は取り返せません。時短勤務で復職した人は、できるだけ早く会社の担当者に確認してください。

手続きと期限

保険料免除の手続きは、本人が会社に申し出て、会社が日本年金機構へ「育児休業等取得者申出書」を提出する流れです。自分で年金事務所に行く必要はありません。

申出の期限:育児休業等の期間中、または育児休業等終了後の終了日から起算して1ヶ月以内に行う必要があります。

通常は会社が手続きしてくれますが、育休の期間を延長・短縮した場合は届出のやり直しが必要です。予定が変わったら必ず会社に連絡してください。ここの連絡漏れが、免除されるはずの保険料が引かれてしまう典型的な原因です。

よくある質問

Q. 育休中の社会保険料は本当に免除?あとで払うの?

A. 完全な免除で、あとから支払う必要はありません。本人負担分・会社負担分ともに免除され、健康保険証もそのまま使えます。

Q. 短い育休でも免除されますか?

A. 令和4年10月1日以降に開始した育休なら、同じ月内で完結する場合でも14日以上取得すれば その月は免除されます。

Q. ボーナスの保険料も免除されますか?

A. 賞与月の末日を含む連続1ヶ月超の育休が必要です。ちょうど1ヶ月では対象外なので、日数設計に注意してください。

Q. 免除されると将来の年金は減りますか?

A. 減りません。免除期間は保険料を納めたものとして年金額の計算に算入されます。

Q. 住民税も免除されますか?

A. されません。住民税は前年の所得に対して課税されるため、育休中も支払いが続きます。育休1年目は特に負担が重くなるので、事前に資金を確保しておいてください。

まとめ

産休・育休中の社会保険料免除は、健康保険料・厚生年金保険料が本人分も会社分も免除され、しかも年金は減らないという非常に手厚い制度です。育休給付金が「67%でも手取り8割」になるのは、この免除があるからです。

取り方で差がつくポイントは2つ。短期育休なら14日以上ボーナス月なら末日を含む1ヶ月超。この2つの基準を知っているだけで、十数万円の差が生まれます。

そして復職後は、養育期間のみなし措置(遡及は2年まで)を忘れずに。時短勤務で働くなら、将来の年金額を守るために必ず申し出てください。

育休中の収入全体については育児休業給付金の手取り計算を、産休期間のお金は出産手当金の計算をあわせてご覧ください。